第10週 pMOSの動作 ―― nMOSの鏡像(ぜんぶ逆)
第9週まで学んだMOSは nMOS(電子で動く)。CMOSに進む前に、その「双子の相棒」pMOS を立てます。コツは「pMOSは nMOS のすべてが逆」。
① nMOSのおさらい(第9週)
土台は p型基板、ソース/ドレインは n型。ゲートに 高い電圧をかけると、電子(青)が集まって通り道(チャネル)ができ、ONになります。
ゲート電圧を切り替え
…
合言葉:nMOSは「押す(高い電圧)とON」。電子(−)は+に引かれるので、ゲートを+(高く)すると電子が集まります。
第9週の主役。動くのは電子。これを基準に、次は「ぜんぶ逆」のpMOSを見ます。
② pMOSの構造 ―― 型がぜんぶ逆
土台は n型基板、ソース/ドレインは p型。動くキャリアは 正孔(赤い輪)。nMOSと型が真逆なのが一目でわかります。
nMOSと比べる
基板:p型 → n型へ
S/D:n型 → p型へ
動くキャリア:電子 → 正孔へ
すべてが反転しています。
第5週で学んだ「n型=電子が多い/p型=正孔が多い」がそのまま効きます。pMOSの主役は正孔(+の符号を持つように振る舞う空席)。
覚え方:名前の通り。nMOS は n型のS/Dで電子、pMOS は p型のS/Dで正孔。「S/Dの型=動くキャリア」。
③ pMOSのON条件 ―― 引くとON
pMOSは、ゲートに 低い電圧をかけるとONになります(nMOSと逆!)。正孔(+)は低い電圧(−側)に引かれて集まり、通り道を作ります。
ゲート電圧を切り替え
…
合言葉:pMOSは「引く(低い電圧)とON」。nMOSの「押すとON」とちょうど反対。この一文がCMOSの全てを支えます。
「nMOS=押すとON/pMOS=引くとON」。次のタブで左右に並べて、対称性を確認します。
④ pMOSの特性カーブ ―― nMOSを点対称にひっくり返す
pMOSは電圧も電流も マイナス方向。グラフは原点の左下(第3象限)に伸びます。形は第9週のnMOSと同じ。違うのは「向き」だけ ―― nMOSのグラフを点対称(180°回転)にした姿です。
しきい値 Vth=−0.5V
Id(負方向に流れる)
nMOSとの違い:nMOSは「Vgsを+に上げる」とON。pMOSは「Vgsを−に下げる」とON。Vgsがしきい値Vth(−0.5V)より低くなると電流が流れ始めます。
電流Idも負(ソースからドレインへ正孔が流れる=電流は逆向き)。グラフは原点から左下へ伸びます。
3つの領域はnMOSと同じ(線形→ピンチオフ→飽和)。ピンチオフは Vds=Vgs−Vth で起こり、左下方向に進みます。
nMOSの鏡像:Vgsをより低く(負に大きく)するほど、飽和電流の大きさが (Vgs−Vth)² で増えます。形は第9週のnMOSと同じ、向きが点対称なだけ。
pMOSの飽和電流の式も、形はnMOSと同じです。符号の扱いだけ異なります。
Id = −½ μ Cox (W/L) (Vgs − Vth)2
nMOSとの違いは先頭の マイナス符号だけ(電流が負方向に流れることを表す)。Vth も負(−0.5V)。(Vgs−Vth) が2乗で効く点はまったく同じです。
合格ライン(pMOSも同じ):「nMOSを点対称にひっくり返したもの」「形と3領域は同じ、向きと符号が逆」とわかればOK。符号計算の深追いは不要です。
なぜ符号が逆?pMOSはVgsもVdsも負、流れる電流も負(正孔がソース→ドレインへ動く=電流は逆向き)。だから式全体にマイナスが付きます。大きさ(絶対値)で見れば、nMOSとまったく同じ式です。
⑤ nMOS vs pMOS 早見 ―― きれいな鏡像
2つを並べると、すべてが左右対称(鏡像)になっています。この対称性こそ、次回のCMOSで「片方ON・片方OFF」を作り出す土台です。
| 項目 | nMOS | pMOS |
| 基板(土台) | p型 | n型 |
| ソース/ドレイン | n型 | p型 |
| 動くキャリア | 電子(−) | 正孔(+) |
| ONになる条件 | ゲートが高い電圧 | ゲートが低い電圧 |
| 合言葉 | 押すとON | 引くとON |
| 入力が「1(高)」のとき | ON | OFF |
| 入力が「0(低)」のとき | OFF | ON |
ここが核心:同じ入力に対して、nMOSとpMOSは 必ず逆のON/OFF になります。だから2つを積めば「いつも片方だけが通る」回路が作れる ―― それが次回のCMOSインバータです。
符号(Vgsの正負・ソース基準)の厳密な議論には立ち入りません。「高い/低いでON/OFFが逆」というイメージで十分です。